高知県室戸市の豊かな自然が育んだ金時芋「西山金時」を、まるでそのまま味わっているかのようなロールケーキに仕立てた「西山金時スウィートポテトロール」。添加物を使わず、芋本来の甘みと風味を最大限に引き出したその味わいは、2022年に高知家のうまいもの大賞・最優秀賞を受賞し、今や全国で注目を集める逸品となっています。
その開発の裏には、若手パティシエの挑戦、地元農家との絆、そして「誰も見たことのないロールケーキをつくる」という熱い想いがありました。
地元の特産品を活かした新名物を目指して
2019年、室戸市の植田市長に「地元の特産品を活用し、物販で勝負できる商品を開発できないか」と相談が寄せられたことが、本商品の開発のきっかけだったといいます。室戸市にはポンカン、ビワ、金目鯛など多くの特産品がありますが、その中で開発チームが注目したのは、自社で既に取り扱いがあり、社内でも高く評価されていた「西山金時」でした。
とはいえ、当初は多忙を極めており、新商品の開発に本格的に時間を割くのは難しい状況だった春田さん。そんな中、同社の若手パティシエである東氏が自ら名乗りを上げたことで、プロジェクトが動き出しました。
「芋で巻く」まったく新しい発想のロールケーキへの挑戦
パティシエが目指したのは、これまでにない新しいスタイルのスイーツ。議論の末にたどり着いたのが、「ロールケーキ」でした。それも、一般的なロールケーキのようにスポンジに芋の味をつける方法ではなく、「芋そのものでロールを巻く」という、前例のない手法で作るもの。ベーキングパウダーを使わず、小麦粉の使用も最小限に抑えた、まったく新しい生地の開発は、想像以上に困難を極めたといいます。柔らかい芋でどうやってロールを成形するか、配合、焼き方、水分量など、細部にわたって何度も試行錯誤を重ねた結果、ようやく「西山金時スウィートポテトロール」が完成しました。
また、スイートポテトを巻くという技術に加えてこだわっているのが、中にたっぷりと巻き込まれているクリーム。同社が契約している「雪ヶ峰牧場」のジャージー牛乳を使って、自社で手作りしているのが特長です。
さらに、柔らかなスイートポテトとは異なる食感のアクセントとして、クランブルもをトッピング。室戸ならではの素材である海洋深層水の旨味が加えられており、ほどよい塩気が芋の自然な甘みをより一層引き立てています。
まるでお芋そのものを食べているような濃厚な味わい。ロールケーキだと思って口にした時の食感に誰もが驚くはず。
高知発の魅力ある商品として、より多くの方に届けたい
「西山金時スウィートポテトロール」は、「うまいもの大賞」以外のコンテストにも既に出品され、受賞歴を持つ実力派スイーツです。そうした中で、あらためて「うまいもの大賞」への応募を決めた理由は、「高知家」として県からのお墨付きを受けることで、さらに県内外の認知度を高めたいという思いがあったからだという春田さん。
「高知を訪れた方の目に留まりやすくなり、県内での存在感もより強まるのではないか」と考えたことが、応募の後押しになったそうです。
「賞を取った商品だから食べてみたい」
室戸ユネスコ世界ジオパークを代表する地形「西山台地」にある芋畑。大昔は海底だった場所が隆起してできた土地で、水はけが良く、肥よくな赤土が特徴です。温暖な気候と海風によるミネラル分が、サツマイモの育成に好相性。
高知県のお墨付きという信頼と関心を高める追い風になる
「うまいもの大賞」の受賞により、メディアでの紹介やポスターでの掲載など、商品の露出が一気に増えた「西山金時スウィートポテトロール」。「うまいもの大賞」の受賞以降、「あの賞を取った商品なら食べてみたい」と関心を寄せてもらえる機会が増えたとのこと。
「県内のおいしいものが勢揃いする大会で、その年を代表する食品だと評価されたことが何よりの喜びでした」とニッコリ。
また、「西山金時スウィートポテトロール」の人気に伴い、「西山金時」自体の知名度も上がり、現在では年間10トン以上を仕入れるまでに成長。これにより、生産農家との取引も安定し、地域にしっかりと還元できるようになりました。
生産者の方々にも「自分たちが作った芋が全国で売れている」と喜ばれており、商品だけでなく、地元の農産物が評価され、広がっていくことに大きなやりがいを感じているそうです。
15年来のお付き合いのある西山金時の生産者さんとの一枚。西山金時スウィーツポテトロールの売上とともに仕入れる量も増えました。
商品の本質と向き合う、貴重な振り返りの機会
「うまいもの大賞への応募は、単に結果を求めるだけでなく、審査会のプレゼンテーションを作り込む過程自体が大きな学びになる」とお話ししてくれた春田さん。
普段は量販店やお土産物店を通じて販売しているため、一般のお客様に直接商品を説明する機会は多くありません。だからこそ、プレゼンの準備を通じて「自分たちが何を大切にしてきたのか」「どこにこだわってきたのか」を振り返り、あらためて言葉にすることで、自社の姿勢や価値を再確認することができたそうです。
審査会では鋭い質問が次々に飛んでくることもあります。そうした質疑応答を通じて、商品への理解が深まり、柔軟な対応力も身につき、その結果、会社全体のレベルアップにもつながったと振り返りました。
多くの気づきと成長をもたらしてくれる「うまいもの大賞」に応募することで、商品や企業のさらなる飛躍につながっていきそうですね。
事業社名:株式会社スウィーツ
住所: 高知県香美市土佐山田町テクノパーク1番地
Web:https://sweets-corpration.com
販売所:とさのさとAGRI COLLETTO、高知駅、道の駅など