
創業70年以上のとうふ店の新商品
ピンクのパッケージが売り場でも目を引きます。
1951年の創業の老舗豆腐店「高橋豆富」。現在は四代目の高橋達巳さんが切り盛りしています。
創業時からのモットーは“からだにおいしい、やさしいとうふ作り”。
「戦後の慌ただしいときに創業したので、どういう経緯でそのモットーを掲げたかの記録は残ってないのですが、現在は学校給食や保育園、福祉施設とも取引があることから、代々受け継がれてきた理念をより心に刻んで真摯にとうふを作っています」と高橋さん。
食品の安全を確保するための衛生管理手法、高知県食品総合衛生管理認定(高知県版HACCP第2ステージ)を取得しており、徹底した衛生管理のもと絹ごしや木綿といった従来の商品はもちろん、腸内フローラを整えるなど科学的な根拠にもとづく機能性を表示した“健康食品としてのとうふ”作りも積極的に行っています。
「ショウガを廃棄させたくない」が始まり
高橋達巳さん。高知の生姜とうふ作りを一人で行っています。
「高知家のうまいもの大賞 2024」で最優秀賞を受賞した「高知の生姜とうふ」は、国産大豆と県内産ショウガ、室戸海洋深層水のにがりが材料です。
フィルムを剥がすとショウガの香りが広がり、ひと口食べれば豊かな風味が感じられつつ、大豆の濃厚な味もちゃんと楽しめます。「当初はショウガをこんなに入れるつもりではなかったのですが、豆腐自体の味とバランスをとっていたら今ぐらいの量じゃないとおいしさが伝わらないと。最初の4倍ぐらいは使っていますね」と高橋さん。
審査時にもショウガの風味がしっかり出ていることが受賞の決め手のひとつにあげられていました。
「高知の生姜とうふ」誕生のきっかけを聞くと、「香我美町山北でショウガ農家をやっている知り合いがいるんですけど、コロナ禍のときに『ショウガが売れなくて廃棄せんといかんがやけど何かに使えんやろうか』って相談されたんです。最初、とうふの容器に薬味としてすりおろしたショウガのパウチを付けてみては? という案があったのですが、パウチを容器に貼りつける作業を販売店にしてもらわないといけなくて。それは到底無理やろうという結論になって…だったらとうふにショウガを入れてみるのは? となったのが始まりですね」と話してくれました。
廃棄ロスゼロの思いも込められた商品が最優秀賞に
豆腐は小ぶりで食べやすくどこかかわいい。1パック4個入り。
ペーストにしたショウガと豆乳の量を調整しながら、試作する日々が1年ほど続き「高知の生姜とうふ」は完成。
過去に応募したこともある「高知家のうまいもの大賞」に出品することにしました。
「最初はSDGs賞を狙っていました。当社では廃棄ロスゼロ、循環型社会の実現を目標に掲げています。とうふに使っている室戸海洋深層水のにがりは塩を作る時に出た廃棄予定のものを分けてもらっています。ショウガも同じで、それらを有効活用しているところがSDGs賞に合っているかなって。捨てる予定だからといっても味や品質が落ちるわけではないというのをこのとうふが証明してくれました。話は逸れますが、とうふ作りの過程で出るおからは通常、産業廃棄物として処理されるのですが、うちは知り合いの畜産農家に提供して動物の飼料や土壌開発に利用してもらっているんですよ」と話してくれました。
その年の最優秀賞に選ばれたことについては「思っていた以上に高い評価を受けてうれしかったです。コロナ禍で先が見えない状況の中で全社員で取り組んだ商品が認められたって。みんなの頑張りが報われて本当によかった」と社員だけでなく、ショウガ農家さんや室戸海洋深層水株式会社の社長らと喜びを分かち合いました。
このコンテストをきっかけに知名度がアップ
高橋豆富は受賞以前から県外に商談に行っており、当時は高知のショウガや海洋深層水のにがりを使っていることをアピールしていました。「受賞してからは『高知県主催の高知家のうまいもの大賞で1位になった商品です』というと、バイヤーさんの食いつきがよくて。最優秀賞という1位のインパクトはやっぱりすごいですね。今回の受賞でうちの顔になる商品ができて、本当によかった」と高橋さん。
この受賞が自信に繋がり、介護食品の品質向上や市場の拡大を目的にした全国規模の「第10回 介護食品・スマイルケア食コンクール」にも出品すると、誰もが知る大企業も参加する中、金賞を獲得。「高知の生姜とうふ」が全国規模で注目を集める看板商品にまで成長しました。
「僕たちも高知家のうまいもの大賞に何度も応募しては落選してヘコみました。でも、審査員や外の人に見てもらったり評価してもらうことで自社商品の弱点や魅力を知ることができました。その助言を活かしてブラッシュアップしたり、別の商品を開発することもできます。受賞したら多くの人に知ってもらえて売上増加に繋がりますし、何より頑張りが評価されたということが自信や今後の励みになるので、ぜひ、多くの事業者さんに挑戦していただきたいと思いますね」とアドバイスしてくれました。
(DATA)
事業社名:有限会社 高橋豆富
住所:高知県高知市大津乙1738-6 高知県食品工業団地内
Web:https://takahashi-tofu.com
販売所:サニーマート、サンプラザ、サンシャイン、他